読書記録

本の感想を書きます。最近の本が多いですたぶん

『美しい距離』山崎ナオコーラ

 

美しい距離

美しい距離

 

限りある生のなかに発見する、永続してゆく命の形。妻はまだ40歳代初めで不治の病におかされたが、その生の息吹が夫を励まし続ける。世の人の心に静かに寄り添う中篇小説。本作で第23回島清恋愛文学賞を受賞。芥川賞候補作

 

 ステレオタイプな物語を拒否し、私たちの物語を生きること。社会を関わり続けることの重要性。今までのナオコーラの小説のよいところをぎゅっと集めたみたいな作品だったし、『この世は二人組ではできあがらない』(傑作!!)の変奏と感じた。

 私たちは他人から理解されるためにステレオタイプな言葉や価値観を使いがちだけれど、そのせいで自分自身を見失いそうになることがある(例えば血液型による性格の分類とか。私はA型だけど大雑把なところは大雑把だ。それでも几帳面な性格のふりをすることもある)。他人には複雑奇怪な「私」はなかなか理解されないから、わかりやすく整えた「私」を見せる。だけど、本来はその整えるときに削られたものこそ、「私」が「私」であるための重要な部分だと。

 ナオコーラの小説の言葉はコミュニケーションの言語の中で削られた複雑奇怪な「私」をそのまま肯定してくれる。だから、私はナオコーラの小説が好きだ。

 

 

 

この世は二人組ではできあがらない (新潮文庫)

この世は二人組ではできあがらない (新潮文庫)

 

 傑作。『美しい距離』と対になるのではと思うので、面白かったならぜひ。

 

長い終わりが始まる (講談社文庫)

長い終わりが始まる (講談社文庫)

 

 初期ナオコーラ作品の傑作。面白い。